【AI開発時代】GeneratePressとAstraどちらでWordPressのテーマを作成する?AI支援開発で開発効率が変わる理由

はじめに
Miyagi です。本日は、PHP 7.4 環境での AI 支援開発における GeneratePress と Astra の比較について書きたいと思います。
前回の記事「【2025 年版】WordPress ブランクテーマ徹底比較:適切な選び方と技術選定のポイント」では、Sage 11、GeneratePress、Astra、そして 0 ベース開発を比較しました。理想的な環境であれば、Sage 11 のモダン開発体験は非常に魅力的です。
しかし、実務の WordPress 開発では様々な技術的制約があります。特によくあるのが、既存のサーバー環境に合わせてテーマ開発を行うというケースです。テーマはどの環境でもある程度動作するよう、開発する必要があります。
そこで今回は、PHP 7.4 環境でのテーマ開発を想定し、Claude Code や GitHub Copilot といったペアプログラミングツールを活用する前提で、GeneratePress と Astra のどちらを選ぶべきか検討してみました。
本記事では以下について説明します:
目次
- PHP 7.4 環境という現実的な制約
- 結論:AI 開発では Astra が有利
- なぜ情報量が AI 開発に影響するのか
- GeneratePress vs Astra:詳細比較
- AI 開発における情報量の影響
- 成熟度と長期安定性
- まとめ
PHP 7.4 環境という現実的な制約
前回の記事では、モダン開発体験を提供する Sage 11 を含めた比較を行いました。Sage 11 は Vite、Tailwind CSS v4、Blade テンプレートなど、Vue/Nuxt 開発者にとって魅力的な機能を備えており、カスタムデザイン重視の案件では非常に有力な選択肢です。
しかし、実務の WordPress 開発では技術的な制約がテーマ選定を左右します。特によくあるのが既存のサーバー環境に合わせたテーマ開発です。実務では以下のような状況が頻繁にあります:
- エックスサーバー、ConoHa WING、さくらサーバーなどで PHP 7.4 環境を使用中
- サーバー移行や PHP バージョンアップは別の案件として扱われる
このようなサーバー環境はそのまま、テーマ開発のみという案件では、PHP 8.2 以上を必須要件とする Sage 11 は使用できません。選択肢は以下に絞られます:
- GeneratePress:PHP 7.4 完全対応、超軽量(10KB)
- Astra:PHP 7.4 完全対応、多機能で情報量が豊富
- 0 ベース開発:前回の記事で検討したが、セキュリティリスクと工数の観点から非推奨
前回の比較では、Sage 11 の「モダン開発体験」が大きな魅力でしたが、PHP 7.4 環境でのテーマ開発という制約の中で、GeneratePress と Astra のどちらを選ぶべきか。この判断において、「AI 支援開発での優位性」という新しい視点が重要になります。
結論:AI 開発では Astra が有利
先に結論を書いておくと、PHP 7.4 環境でのテーマ開発で、Claude Code などの AI 支援開発を使うなら、Astra の方が約 2-3 倍の情報量があり、AI の回答精度が高くなるという点で GeneratePress より有利でした。
前回の記事では、Sage 11 の「モダン開発体験」が最大の魅力でしたが、PHP 8.2 以上が使えない環境では、GeneratePress の「軽量性」と Astra の「情報量」のどちらを重視するかが判断のポイントになります。従来のテーマ選定では「軽量性」や「シンプルさ」が重視されてきましたが、AI 支援開発が当たり前になった 2025 年では、「AI が学習できる情報量」という新しい判断軸が重要になっています。
調査の結果、Astra はドキュメント数、フック数、コミュニティ規模のすべてで GeneratePress を上回っており、この差が AI の提案精度に直結することが分かりました。PHP 7.4 環境でのテーマ開発では、Sage 11 のような最先端の開発体験は得られませんが、Astra の豊富な情報量を活かした AI 支援開発により、開発効率を大きく向上させることができます。
ただし、GeneratePress も十分に成熟した優れたテーマであり、軽量性やシンプルさを最優先する場合は依然として良い選択肢です。この記事では、AI 開発という観点から両者を徹底比較します。
📌 補足:フック(Hook)とは
フックとは、WordPress が提供する「コードの差し込み口」のことです。テーマやプラグインのファイルを直接編集せずに、特定の場所に独自の処理を追加できる仕組みで、保守性の高い開発には欠かせません。
なぜフックが重要か:
- 更新に強い:テーマ本体が更新されても、フックで追加した機能は影響を受けません
- 安全性:テーマファイルを直接編集しないため、バグを生みにくい
- 再利用性:一度書いたコードを別のプロジェクトでも使い回せる
フックの基本的な使い方:
// ヘッダーの直後に要素を追加する例 add_action('astra_header_after', function() { echo '<div class="custom-notice">お知らせ</div>'; });
フックが多いテーマほど、柔軟なカスタマイズが可能になります。Astra は 200 以上、GeneratePress は 50-100 程度のフックを提供しており、この差が AI 開発時の提案精度に影響します。
なぜ情報量が AI 開発に影響するのか
AI 支援ツールの仕組み
Claude Code や GitHub Copilot といったツールは、インターネット上の膨大な情報を学習しています。つまり、あるテーマについての情報が多ければ多いほど、AI はより正確で実践的な回答を生成できます。
具体的には以下のような流れです。開発者が「記事タイトルの下にカテゴリーバッジを表示したい」と Claude Code に依頼すると、AI は学習データからそのテーマに関する実装例を探します。この時、Astra のような情報量が豊富なテーマであれば、数千件の実装例から最適な方法を提案できますが、情報が少ないテーマでは一般的な回答しかできません。
情報量の差が生む具体的な違い
GeneratePress の場合:
- 公式ドキュメント:約 200 ページ
- Google 検索結果:約 50 万件
- フォーラム投稿:約 5 万件
- フック数:50-100 程度
Astra の場合:
- 公式ドキュメント:約 400 ページ(2 倍)
- Google 検索結果:約 150 万件(3 倍)
- フォーラム投稿:約 12 万件(2.4 倍)
- フック数:200 以上(2 倍以上)
この数値の差が、AI の回答精度に直結します。例えば、エラーが発生した時、Astra なら類似のエラー事例が豊富にあるため、AI がピンポイントで解決策を提案できます。一方、GeneratePress では一般的な WordPress のトラブルシューティングに頼ることになり、解決までの時間が長くなる可能性があります。
GeneratePress vs Astra:詳細比較
基本スペック比較
まず、両テーマの基本的な特徴を比較してみます。
項目 | GeneratePress | Astra | AI 開発への影響 |
---|---|---|---|
リリース年 | 2014 年(11 年) | 2017 年(8 年) | 両方成熟 |
テーマサイズ | 10KB(超軽量) | 50KB(軽量) | GeneratePress 有利 |
フック数 | 50-100 程度 | 200 以上 | Astra 有利 |
公式ドキュメント | 約 200 ページ | 約 400 ページ | Astra 有利 |
開発体制 | 個人+小チーム | 企業(20+人) | Astra 有利 |
コミュニティ規模 | 中規模 | 大規模 | Astra 有利 |
無料版の制限 | 最小限の機能 | やや多機能 | Astra 有利 |
カスタマイズ性 | 完全自由 | 完全自由 | 同等 |
GeneratePress は軽量性では圧倒的ですが、AI 支援開発で重要な「情報量」と「コミュニティ規模」の面では Astra が優位に立っています。
フックの重要性
フックとは、WordPress が用意した「コードの差し込み口」のことです。テーマファイルを直接編集せずに、特定の場所に独自の処理を追加できる仕組みで、保守性の高い開発には欠かせません。
GeneratePress のフック例:
generate_before_header
generate_after_header
generate_after_entry_content
// シンプルで分かりやすいが、選択肢は限定的
Astra のフック例:
astra_masthead_top
astra_masthead_content
astra_header_before
astra_header_after
astra_entry_content_before
astra_entry_content_after
// 非常に細かく、挿入位置の選択肢が豊富
AI 支援開発では、このフックの多さが大きな意味を持ちます。Claude Code に「記事タイトルの直前に装飾要素を追加したい」と依頼した場合、Astra なら 200 以上のフックから最適な位置を提案できますが、GeneratePress では選択肢が限られるため、より汎用的な提案になりがちです。
実際の情報量の違い
より詳細な調査結果がこちらです。
情報源 | GeneratePress | Astra | 差分 |
---|---|---|---|
Google 検索結果 | 約 50 万件 | 約 150 万件 | 3 倍 |
Stack Overflow 投稿 | 約 300 件 | 約 800 件 | 2.7 倍 |
YouTube 動画 | 約 5,000 本 | 約 15,000 本 | 3 倍 |
GitHub Issues | 約 400 件 | 約 1,200 件 | 3 倍 |
公式フォーラム | 約 5 万件 | 約 12 万件 | 2.4 倍 |
WordPress.org レビュー | 約 2,500 件 | 約 6,000 件 | 2.4 倍 |
アクティブインストール | 100 万+ | 100 万+ | 同等 |
この圧倒的な情報量の差が、AI 支援開発における「解決速度」と「提案精度」に直結します。
情報源:
- GeneratePress 公式サイト
- Astra 公式サイト
- WordPress.org テーマディレクトリ
- Google 検索、Stack Overflow、YouTube、GitHub での調査(2025 年 10 月時点)
AI 開発における情報量の影響
前述の情報量の差は、実際の開発シーンでどのように影響するのでしょうか。AI 支援開発の経験から、以下のような違いが生じると考えられます。
情報が豊富なテーマ(Astra)を使う場合、AI は多数の実装例やエラー解決事例を学習しているため、より具体的で実践的な提案が得られる傾向があります。例えば、カスタマイズ用のフックを提案する際、単に「このフックが使えます」だけでなく、そのフックを使った具体的なコード例やベストプラクティスまで含まれることが期待できます。
一方、情報が少ないテーマの場合、AI は一般的な WordPress の知識で回答することになります。これは決して間違いではありませんが、「そのテーマ特有の最適解」を提示するには、開発者自身が公式ドキュメントやフォーラムを調べる必要が出てきます。
特にエラー対応では、この差が顕著です。コミュニティで多く議論されているエラーであれば、AI がピンポイントで解決策を提案できますが、情報が少ない場合は標準的なトラブルシューティングを試す必要があり、解決までの時間に差が出ることがあります。
もちろん、これは「GeneratePress が劣っている」という意味ではありません。軽量でシンプルな設計思想は大きな利点であり、自分でコードを書くことを楽しむ開発者にとっては、むしろ情報量が少ない方が自由度が高いとも言えます。ただ、AI に多くを任せたい場合は、情報量の多いテーマの方が効率的に開発を進められる可能性が高いということです。
成熟度と長期安定性
AI 開発での優位性とは別の視点として、長期的な保守性についても触れておきます。
GeneratePress は 2014 年リリースで 11 年の実績があり、コードベースが非常に安定しています。Tom Usborne 氏を中心とした小規模チームでの開発で、軽量でシンプルという設計思想が一貫しています。ただ、個人プロジェクト的な側面が強いため、将来的な継続性については多少気になる部分もあります。
Astra は 2017 年スタートで 8 年の実績。Brainstorm Force という企業が 20 人以上のチームで開発しており、Starter Templates や Spectra などのエコシステムも展開しています。ビジネスとして成立しているため、サポート体制や継続性という意味では安心感があります。
どちらも現時点で活発に更新されており、セキュリティ面での懸念はありません。長期運用を考えると、企業運営の Astra の方が「5 年後も確実にサポートされている」という安心感は高いかもしれません。一方で、GeneratePress のシンプルさは「仮に開発が止まっても影響が少ない」という利点もあります。
まとめ
PHP 7.4 環境でのテーマ開発で、AI 支援開発を活用する場合、Astra が最適な選択肢となりました。
前回の記事では、Sage 11 のモダン開発体験、GeneratePress の軽量性、Astra の多機能性を比較し、用途に応じた選び方を提案しました。しかし、実務では技術的な制約が判断を左右します。既存のサーバー環境に合わせてテーマ開発を行うというケースでは、PHP 8.2 以上を必要とする Sage 11 は選択肢から外れ、GeneratePress と Astra の 2 択となります。
情報量の差:
- ドキュメント:Astra が 2 倍
- オンライン情報:Astra が 2-3 倍
- フック数:Astra が 2 倍以上
AI 開発への影響:
- AI の提案精度:Astra で明確に向上
- エラー解決:情報量の差が解決速度に影響
- 実装効率:コミュニティの知見を活用可能
成熟度:
- どちらも十分に成熟
- GeneratePress:11 年の実績、個人+小規模
- Astra:8 年の実績、企業運営で安定
Claude Code や GitHub Copilot を活用する開発者にとって、Astra の豊富な情報量は大きなアドバンテージとなります。AI が学習できる実例が多いほど、より正確で実践的な提案が得られ、開発効率が向上します。
PHP 7.4 環境でのテーマ開発では、Sage 11 のような最先端の開発体験は得られませんが、Astra の情報量と AI 支援開発の組み合わせにより、十分に効率的な開発が可能です。もし PHP 8.2 以上の環境でテーマ開発ができる案件であれば、前回の記事で紹介した Sage 11 も検討する価値があります。
最終的な推奨:
- PHP 7.4 環境で AI 支援開発 → Astra
- PHP 7.4 環境で軽量性最優先 → GeneratePress
- PHP 8.2 以上でモダン開発 → Sage 11(前回記事参照)
AI 開発時代の新しい判断基準として、「情報量」という視点でテーマを選ぶこと、そして実務でよくある技術的制約を踏まえた現実的な選択をすることをお勧めします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。良い開発ライフを!
参考
公式サイト:
調査データ:
- Google 検索、Stack Overflow、YouTube、GitHub での情報量調査(2025 年 10 月時点)
- 各テーマの公式ドキュメント、フォーラム投稿数
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注記: 本記事の数値データは 2025 年 10 月時点の調査結果です。最新情報は各公式サイトをご確認ください。