【2025年版】WordPressブランクテーマ徹底比較:適切な選び方と技術選定のポイント

はじめに

Miyagi です。本日は、WordPress ブランクテーマの選定と技術比較について書きたいと思います。

前回まで 0 ベースでの WordPress テーマ開発についてアウトプットしてきましたが、これを社内の勉強会で発表した際、メンバーから「WordPress のブランクテーマ」の存在を教えてもらいました。この気づきをきっかけに、改めてテーマ選定について深く調査することにしました。

WordPress でカスタムテーマを作る際、「どのブランクテーマを選ぶべきか」は多くの開発者が悩むポイントです。2025 年 10 月時点で、WordPress 開発の世界は大きな転換期を迎えています。13 年間コミュニティを支えてきた「Underscores」が 2025 年 9 月にアーカイブされ、FSE(フルサイト編集)への移行が進む中、モダンな開発環境を求める開発者にとって、選択肢の見極めが重要になっています。

特に Vue/Nuxt 等のモダンフロントエンド開発経験がある開発者にとって、「WordPress ってブログツールでしょ?」という先入観があるかもしれません。しかし、調査を通じて分かったのは、WordPress の可能性と限界、そして適切なテーマ選びの重要性です。

本記事では以下について説明します:

目次

 

2025 年版ブランクテーマ徹底比較

先に結論を書いておくと、WordPress 開発では「用途が第一、技術的嗜好は二の次」がポイントでした。

まず、2025 年の WordPress 開発における大きな変化として、最も有名だった「Underscores (_s)」が 2025 年 9 月にアーカイブされたという事実があります。これは FSE(フルサイト編集)への移行を象徴する出来事で、WordPress 開発の新時代を示しています。

運営主体とコミュニティの重要性

テーマ選定では、運営主体とコミュニティの健全性も重要です。2025 年 9 月の Underscoers アーカイブが示すように、「人気テーマ=永続的なサポート」ではありません。

判断のポイント:

  • 企業運営: 商業的サポートが期待できるが、方針転換リスクあり
  • OSS 団体: 透明性が高く、コミュニティ主導で安定
  • 個人開発: 情熱的だが、メンテナンス継続性にリスク

重要なのは「コミュニティの活発さ」です。活発なフォーラムや Discord があれば、運営形態に関わらず問題解決しやすくなります。

主要ブランクテーマの比較表

現在アクティブに開発されている主要テーマを、持続可能性と技術的観点から比較しました:

テーマ 人気度 運営・ビジネスモデル コミュニティ 最新版 技術スタック 学習コスト 開発速度 最適用途
Sage 11 ⭐⭐⭐⭐⭐13,088 Stars Roots(OSS 団体)MIT・完全無償 Discord 3.5k+GitHub 活発 11.0.1(2025/3) Vite, Tailwind v4, Blade, PHP 8.2+ 高(2 週間) 企業サイト、カスタム開発、長期保守
GeneratePress ⭐⭐⭐⭐⭐100 万+ WP Engine(企業)Freemium フォーラム活発100 万+ユーザー 継続更新中 超軽量(<10KB)、バニラ CSS 低(3 日) パフォーマンス重視、迅速な開発
Astra ⭐⭐⭐⭐⭐100 万+ Brainstorm ForceFreemium FB 20k+大規模コミュニティ 継続更新中 多機能、テンプレート 100+ 低(2 日) 最速 EC、ビジネスサイト、初心者
Understrap ⭐⭐⭐⭐3,100 Stars 個人+コミュニティGPL・完全無償 GitHub 中規模フォーラム有 2024 年更新 Bootstrap 5, Sass 中(1 週間) Bootstrap 開発者、ラピッド開発
Underscores ⭐⭐⭐⭐10,000+ Stars Automattic(企業)2025/9 アーカイブ 開発停止 アーカイブ済 クラシック PHP - - 新規非推奨
各テーマの特徴

Sage 11 の強み: Vue/Nuxt 開発者にとって魅力的なのが Sage 11 です。Blade テンプレートは Vue と似た構文({{ }}@if@foreach)で学習しやすく、Vite の HMR(ホットモジュールリプレースメント)が使えるため、保存すると即座にブラウザが更新されます。Tailwind v4 が自動的に WordPress の theme.json に変換される機能も優れており、モダンなフロントエンド開発体験が得られます。

Laravel 風のサービスプロバイダー、PSR-4 オートローディング、Blade テンプレートにより、従来の WordPress のfunctions.phpに数千行のコードが詰め込まれる問題を解決。コード品質と保守性が最大の強みです。

GeneratePress/Astra の強み: 一方、GeneratePress と Astra は「シンプルで速い」が特徴。特に GeneratePress は 10KB 以下という驚異的な軽量性で、PageSpeed 100 点も達成可能です。学習コストが低く、3 日程度でプロダクション投入できるのは大きなメリット。迅速な開発と運用の簡単さが強みです。

 

Sage 11 の実力と限界

ここが本記事で最も重要なポイントです。Sage 11 は優れたテーマだが、WordPress の制約を超えることはできないという現実があります。

用途別の適性度評価

各用途での Sage 11 の実力を、開発工数と推奨度も含めて評価しました:

用途 適性度 開発工数 推奨度 主な理由 代替案
企業サイト ⭐⭐⭐⭐⭐ 中(2-3 週間) 最推奨 カスタムデザインが必要、保守性重視 -
ポートフォリオ ⭐⭐⭐⭐⭐ 中(2 週間) 最推奨 デザイン自由度が最重要 -
ブログ・メディア ⭐⭐⭐⭐ 低(1-2 週間) 推奨 WP の本来用途、問題なし GeneratePress(より速い)
カスタム EC ⭐⭐⭐⭐ 高(3-4 週間) 条件付推奨 WooCommerce 統合の学習必要 -
標準 EC ⭐⭐⭐ 中(2-3 週間) 検討要 プラグイン依存、他テーマの方が効率的 Astra Pro + WooCommerce
会員制サイト ⭐⭐⭐ 高(3-4 週間) 検討要 プラグイン統合に工数、メリット薄い GeneratePress + MemberPress
予約システム ⭐⭐ 高(3 週間) 非推奨 プラグイン依存大、価値限定的 専用テーマ + プラグイン
不動産サイト ⭐⭐ 高(3 週間) 非推奨 プラグイン依存大、価値限定的 不動産専用テーマ

この表から分かるように、Sage は「カスタムデザインとコード品質が重要な領域」で真価を発揮します。一方、プラグイン機能がメインとなる領域では、Sage の投資対効果が低くなります。

なぜ適性度に差が出るのか

企業サイトやポートフォリオでは、デザインの自由度、長期保守、コード品質が重要です。Sage の構造化されたアーキテクチャが活きます。

一方、予約システムや不動産サイトは、Amelia(予約)や EstateEngine(不動産)といったプラグインに機能の大部分を依存します。これらは独自のテンプレートシステムを持っているため、Sage でカスタマイズできる部分が限定的なんです。結果として、シンプルなテーマの方が効率的になります。

 

高速でシンプルな選択肢:GeneratePress/Astra の実力

前章で Sage 11 の限界を見てきましたが、「プラグイン依存が大きいプロジェクトでは、わざわざ Sage を選ぶメリットが薄い」という結論でした。

では、そういったプロジェクトでは何を選ぶべきか?答えは**「高速でシンプルなテーマ」**です。特に GeneratePress と Astra は、モダンな開発体験を犠牲にする代わりに、圧倒的な開発速度とパフォーマンスを提供します。

開発速度の現実的な比較

同じ企業サイト(10 ページ程度)を構築する場合の工数比較:

フェーズ Sage 11 GeneratePress 差分
環境構築 3 日(Node.js、Composer、Vite 設定) 0.5 日(テーマインストールのみ) -2.5 日
デザイン実装 8-12 日(Blade + Tailwind) 4-7 日(ビルトインカスタマイザー) -4〜5 日
調整・最適化 2-3 日(ビルド設定、パフォーマンス) 0.5 日(すでに最適化済み) -1.5〜2.5 日
合計 14-21 日 5-8 日 -9〜13 日

この差は単なる速度の違いではなく、アプローチの根本的な違いから生まれます:

Sage のアプローチ:

  • コードを書いて UI を構築
  • 開発者が全てコントロール
  • 柔軟性が高いが、時間がかかる

シンプルテーマのアプローチ:

  • GUI で設定して UI を構築
  • 事前定義されたオプションから選択
  • 制約があるが、圧倒的に速い
パフォーマンスの実測値

GeneratePress の軽量性は特筆すべきものがあります:

指標 GeneratePress Sage 11(最適化後) 差分
テーマサイズ <10KB 50-100KB 約 5-10 倍
PageSpeed スコア 95-100 点 85-95 点 +5〜15 点
初回読込時間 0.3-0.5 秒 0.5-0.8 秒 約 40%高速
モバイル体感速度 非常に速い 速い -
どんな場合にシンプルテーマを選ぶべきか

以下のマトリックスで判断できます:

プロジェクト特性 Sage 11 を選ぶべき シンプルテーマを選ぶべき
デザインの独自性 完全カスタムデザイン 標準的なレイアウト
開発期間 2 週間以上確保可能 1 週間以内の納期
技術スタック モダン開発体験を重視 WordPress 標準で十分
保守体制 開発チームが継続関与 非技術者が日常更新
パフォーマンス優先度 中程度 最重要(モバイルファースト)
トレードオフの理解

シンプルテーマを選ぶということは、以下を受け入れることを意味します:

失うもの:

  • モダンな開発体験(Vite HMR、Tailwind 等)
  • コードの高度な構造化
  • 無限のカスタマイズ自由度

得るもの:

  • 圧倒的な開発スピード(2-3 倍)
  • 優れたパフォーマンス(PageSpeed 100 点)
  • 非技術者でも扱いやすい管理画面
  • プラグイン互換性の高さ
次章への問いかけ

ここまでで「Sage の強みと限界」「シンプルテーマの価値」を見てきました。しかし、もっと根本的な疑問が残ります:

「そもそも WordPress を選ぶべきなのか?Nuxt や Next.js ではダメなのか?」

この問いに答えるため、次章では WordPress とモダンフレームワークの根本的な違いを掘り下げます。

 

Nuxt と WordPress の根本的な違い

モダンフロントエンド開発者として気づいた重要な点は、Nuxt と WordPress は根本的に異なるツールだということです。

技術的な対応範囲の比較
機能・用途 Nuxt(汎用フレームワーク) WordPress + Sage(CMS) 開発工数比較
ブログ ○ SSG/SSR 対応 ◎ 標準機能で完結 Nuxt: 24-38 日WP: 5-8 日約 4-5 倍差
企業サイト ○ 完全カスタム ◎ テーマ活用 Nuxt: 21-34 日WP: 8-12 日約 2-3 倍差
EC ○ API 統合(Stripe 等) ◎ WooCommerce 標準 工数はほぼ同等
複雑なロジック ◎ 完全制御可能 △ 実装困難 -
リアルタイム ◎ WebSocket 対応 ✗ 非対応 -
SaaS 型アプリ ◎ フル対応 ✗ 不向き -
管理画面 ✗ 自作必要 ◎ 標準装備 -
メディア管理 ✗ 自作必要 ◎ 標準装備 -
ユーザー管理 ✗ 自作必要 ◎ 標準装備 -
SEO 対策 △ 自作必要 ◎ プラグイン豊富 -

この表が示すように、Nuxt は「何でも作れる自由」がある一方、WordPress が標準提供する機能を全て自作する必要があります。

トレードオフの理解

シンプルなブログサイトを例にすると:

Nuxt で実装する場合(24-38 日):

  • 認証システム: 3-5 日
  • 記事管理 UI: 5-7 日
  • メディアアップロード: 2-3 日
  • カテゴリ・タグ: 2-3 日
  • 検索機能: 2-3 日
  • コメント機能: 3-5 日
  • SEO 対策: 2-3 日
  • デザイン実装: 5-7 日

WordPress + Sage で実装する場合(5-8 日):

  • 上記機能は全て標準装備(0 日)
  • デザイン実装: 5-7 日
  • カスタマイズ: 1 日

この工数差は**WordPress が「コンテンツ管理に特化した CMS」**だからこそ実現できます。逆に、複雑なビジネスロジックやリアルタイム機能が必要なら、Nuxt の方が適しています。

 

0 ベース開発という選択肢

「プラグイン依存のメンテナンスが大変」という懸念から、AI 支援ツール(Claude Code 等)を活用した 0 ベーステーマ開発を検討する開発者もいることでしょう(->前回までの私)。この選択肢について検証しました。

メリットとデメリットの現実
観点 0 ベース開発 Sage + 最小限プラグイン
サポート切れリスク ✅ なし 🟡 あり(低リスク)
カスタマイズ性 ✅ 完全制御 ✅ 十分高い
セキュリティ ❌ 自作リスク大 ✅ 実証済み
開発工数 ❌ 大(3-6 ヶ月) ✅ 小(2-4 週間)
保守性 🟡 独自実装依存 ✅ ベストプラクティス
WordPress 深い理解 ❌ 必須 🟡 基礎のみで OK
初心者向け ❌ 危険 ✅ 可能
Claude Code 等 AI 支援の適切な活用

AI 支援ツールは強力ですが、「開発を加速するツール」であって「0 から全て作るツール」ではないという認識が重要です。

効果的な使い方:

  • Blade テンプレート作成支援
  • カスタム PHP 関数の生成
  • CSS/Tailwind コーディング
  • デバッグ・リファクタリング支援
  • ベストプラクティス学習の加速

非推奨な使い方:

  • WordPress core 機能の再発明
  • セキュリティ機能の自作(SQL インジェクション、XSS、CSRF 対策等)
  • 既存プラグインの代替実装
プラグイン依存の再定義

「プラグイン依存」には良い依存と悪い依存があります:

プラグインタイプ 評価 メンテナンスリスク 推奨度
業界標準(必須) Advanced Custom Fields ProContact Form 7 極小(500 万 DL、定期更新) 使うべき
業界標準(推奨) Yoast SEOWP Rocket 極小 推奨
マイナープラグイン ⚠️ 評価<3.0、DL<1 万 中〜高 避ける
開発停止 1 年以上更新なし 避ける
複雑な多機能 🟡 ページビルダー等 慎重に

月次メンテナンス時間:業界標準プラグイン 2-4 個なら約 30 分程度で完了します。これを避けるために数ヶ月の開発工数を投じるのは、投資対効果が合いません

結論として、0 ベース開発ではなく、Sage 11 + 最小限の必須プラグイン構成を推奨します。

 

技術選定のベストプラクティス

実際のプロジェクトで技術選定する際の判断基準をまとめました。

判断フローチャート(表形式)
あなたの状況 推奨テーマ 推奨度 理由
モダン開発経験あり+カスタムデザイン重視+長期保守 Sage 11 ⭐⭐⭐⭐⭐ Vue/Nuxt 経験が活きるコード品質・保守性が重要
迅速な開発+パフォーマンス重視+シンプルな要件 GeneratePress ⭐⭐⭐⭐⭐ 3 日で開発可能10KB 以下の軽量性
初心者+テンプレート活用+EC 機能 Astra Pro ⭐⭐⭐⭐⭐ 100+テンプレートWooCommerce 最適化
Bootstrap 経験+タイトな納期 Understrap ⭐⭐⭐⭐ 既存知識活用ラピッドプロトタイピング
複雑なロジック+リアルタイム機能 WordPress 適切か再検討 - Nuxt 等の検討を推奨
リスク管理

プロジェクトで想定されるリスクと対策:

リスク 影響度 対策
要件の後付け変更 事前の徹底的なヒアリング
選定テーマが要件に不適合 プロトタイプでの検証
プラグイン依存の増大 最小限構成の厳守、月次レビュー
学習コスト超過 段階的学習、AI 支援活用
0 ベース開発の失敗 採用しない
重要な確認事項

技術選定前に明確にすべき項目:

プロジェクトの性質:

  • サイトの目的・種類(企業サイト?EC?ブログ?)
  • 主要機能(お問い合わせ?予約?会員制?)
  • ページ構成・規模
  • ターゲットユーザー層

運用体制:

  • 誰が日常的に編集するのか
  • 技術的スキルレベル
  • 更新頻度

技術的制約:

  • サーバー環境
  • 既存システムとの連携
  • 予算・納期

これらが明確になって初めて、適切な技術選定が可能になります。

 

まとめ

2025 年版 WordPress 開発の現実を調査した結果、以下の重要な知見が得られました。

重要な発見:

  1. WordPress テーマ選定は「用途が第一」 - 技術的嗜好は二の次
  2. Sage 11 は優れたテーマだが万能ではない - WordPress 自体の制約は残る
  3. シンプルテーマには明確な価値がある - 開発速度とパフォーマンスで圧倒
  4. Nuxt と WordPress は根本的に異なるツール - 汎用フレームワーク vs CMS
  5. プラグイン依存は「どのプラグインか」が重要 - 業界標準なら低リスク
  6. AI 支援ツールは開発加速に有効 - ただし 0 ベース開発の免罪符にはならない
  7. 要件不明確な状態での技術選定は高リスク - 事前ヒアリングが成功の鍵

推奨する技術選定:

プロジェクトタイプ 推奨 理由
カスタムデザイン重視 Sage 11 + 最小限プラグイン 柔軟性と保守性のバランス
迅速な開発が必要 GeneratePress + ACF 開発速度と軽量性
初心者・テンプレート活用 Astra Pro 学習コストの低さ
0 ベース開発 非推奨 リスク過大、非効率

WordPress 開発では、「技術的に優れている」と「実用的に効率的」は別物です。適切なツールを適切な場面で選ぶ判断力が、プロジェクト成功の鍵となります。

参考

注記: 本記事の情報は 2025 年 10 月 7 日時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。良い開発ライフを!